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札幌地方裁判所 昭和45年(わ)425号 判決 1973年3月19日

本店所在地

北海道樺戸郡月形町字札比内一〇〇〇番地の五

株式会社 森脇組

(右代表者代表取締役 森脇武雄)

本籍ならびに住居

右同所

会社役員

森脇武雄

大正四年七月一〇日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官猪方重威、弁護人海老名利一、同付上幸彦各出席のうえ審理し、つぎのとおり判決する。

主文

被告人森脇武雄を懲役三月に、被告株式会社森脇組を罰金二〇〇万円に、各処する。

被告人森脇武雄に対しこの裁判が確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人らの負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社は、北海道樺戸郡月形町字札比内一〇〇〇番地の五に本店を置き、土木建築工事の請負業を営む資本金一、六〇〇万円の株式会社であり、被告人森脇武雄は、右被告会社の代表取締役としてその業務全般を統轄していたものであるが、被告人森脇は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、収入の一部を除外しあるいは架空経費を計上して簿外預金を設定するなどの不正な方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和四二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が一九、二六八、五七〇円であり、これに対する法人税額が六、三六三、二八〇円であるのにかかわらず、昭和四三年二月二日、岩見沢市二条東四丁目五番地の一所在の所轄岩見沢税務署において、同税務署長に対し、所得金額は四、四八八、六九〇円であり、これに対する法人税額は一、二二〇、八八〇円である旨の内容虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告会社の右事業年度の正規の法人税額と申告税額との差額五、一四二、四〇〇円を免れ、

第二、昭和四三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が二〇、〇九〇、七一五円であり、これに対する法人税額が六、四七九、四一〇円であるのにかかわらず、昭和四四年二月六日、前記所轄税務署において、同税務署長に対し、所得金額は九、六〇二、三五六円であり、これに対する法人税額は二、八二八、一七〇円である旨の内容虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告会社の右事業年度の正規の法人税額と申告税額との差額五、一四二、四〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一、被告人の当公判廷における供述

一、森脇武雄作成の上申書五通

一、大蔵事務官作成の森脇武雄に対する質問てん末書九通

一、森脇武雄の検察官に対する供述調書二通

一、登記官宮野正友作成の登記簿謄本

一、波多哲夫作成の上申書

一、高田敬子作成の上申書

一、佐藤松夫の検察官に対する供述調書

一、大蔵事務官作成の佐藤松夫に対する質問てん末書

一、株式会社北海道銀行月形支店支店長西山友治作成の回答書

一、株式会社北海道拓殖銀行岩見沢支店支店長角田耕一作成の回答書

一、石狩中央信用金庫月形支店支店長加賀呑近作成の回答書

一、中空知信用金庫浦臼支店支店長高橋請児作成の回答書

一、株式会社北海道銀行豊平支店支店長内田正一作成の回答書

一、株式会社三井銀行札幌支店支店長河田弘作成の回答書

一、鈴木忠作成の回答書

一、山本信之作成の回答書

一、河上栄太郎作成の回答書

一、種崎隆夫作成の上申書

一、大蔵事務官作成の下山孝に対する質問てん末書

一、中野進、岩谷昭英の検察官に対する各供述調書

一、高田勇、平川憲各作成の各答申書

一、井向隆の検察官に対する供述証書

一、石田平吉、喜多清吉各作成の各答申書

一、大蔵事務官作成の山本成夫に対する質問てん末書

一、三越又雄作成の答申書

一、片山弥生作成の上申書

一、石本勇作成の答申書

一、大蔵事務官作成の森脇トキ子に対する質問てん末書二通

一、森脇トキコの検察官に対する供述調書

一、株式会社北海道銀行作成の回答書

一、伊藤力、伊藤利雄各作成の各答申書

一、中空知信用金庫理事長岡田外之作成の回答書

一、岡部英夫作成の答申書

一、大蔵事務官作成の山本清春に対する質問てん末書

一、西輝子作成の答申書

一、浦臼町森林組合組合長理事吉岡清栄作成の回答書

一、大蔵事務官菅原作次郎外一名作成の調査事績報告書

一、郵政事務官吉永家成作成の答申書

一、岩見沢税務署徴収課長作成の「申告所得税の納付状況について」と題する書面

一、大蔵事務官五十嵐廣平外四名作成の調査事績報告書

一、岩見沢税務署長作成の「青色申告の承認の取消について」と題する書面

一、大蔵事務官中道正雄作成の調査事績報告書五通(ただし、44・11・1付の二枚目借入金の欄および別紙3の営業収入43年度の欄ならびに44・10・22の表紙上段の調査事項中「会社帰属」の部分を除く。)

一、検察事務官佐々木達雄作成の電話通信要旨

一、第三回公判調書中証人橘貢、同中道正雄、同佐藤松雄の各供述記載部分

一、第五回公判調書中証人中野敬子の供述記載部分

一、証人佐藤松雄、同山本辰四郎、同中道正雄の当公判廷における各供述

一、中道正雄作成の修正貸借対照表

一、柴田利克作成の修正貸借対照表

一、証人兼鑑定人中道正雄、同柴田利克の当公判廷における各供述

一、中道正雄作成の答申書

一、押収してある

(一)  法人税決定決議書綴一綴(昭和四五年押第一五五号の1)

(二)  元帳六綴(同押号の2、3、7、9)

(三)  買掛帳一綴(同押号の4)

(四)  現金出納帳一冊(同押号の5)

(五)  振替伝票一綴(同押号の6)

(六)  決算関係書類一綴(同押号の8)

(七)  個人台帳一綴(同押号の10)

(八)  金銭出納帳二綴(同押号の11・17)

(九)  売掛帳一綴(同押号の21)

なお、弁護人は、青色申告が取消されることによつて関税対象所得となつた分については被告人らには犯意がない旨主張するけれども、証拠によれば、被告人森脇は本件当時、所得を実際よりも過少に申告して脱税するために簿外預金その他の不正な手段を工作していたものであり、かつ、これが所得の正しい申告を前提とする青色申告制度に反するものであることを了知していたことを窺うことができるので、仮りに被告人森脇が個々の科目の細部にわたつて個別的なほ脱の認識はなかつたとしても本件申告税額が概括的に虚偽であることを知りながらあえて税を免れる意思のもとになした不正な申告であると認めるにつき妨げとはならない。よつて弁護人の主張は採用できない。

(法令の適用)

被告人森脇武雄の判示所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するので所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪の関係にあるので同法四七条本文、一〇条により犯情が重いと認められる判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑制範囲内において被告人を懲役三月に処し、刑法二五条により二年間右刑の執行を猶予することとし、被告会社については法人税法一六四条一項により罰金刑を科すべきところ、判示各所為は刑法四五条前段の併合罪の関係にあるので刑法四八条二項により右各罪の本条に定めた罰金の合算額範囲内において被告会社を罰金二〇〇万円に処することとする。訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項本文により全部被告人らに負担させる。

そこで主文のとおり判決する。

(裁判官 佐野昭一)

右は謄本である。

昭和四八年四月一〇日

札幌地方裁判所

裁判所書記官 岡田守雄

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